高密度織物縫製対策・糸を変えてみる
今回、保育所の下駄箱カバーを縫うにあたって起きた縫製トラブルのまとめです。
高密度織物縫製対策・針を変えてみるもお読み下さい。
実際のところブツはもう納品も済んでいるので、今更こんなこと検証してもなーと思いつつ、手元にまだ3m50cmほど残った生地もあるわけだし、もうちょっとがんばってみるか。
今回の注目テーマは糸。
私が本番で使った糸はフジックスのふぁじい淡色用透過性ミシン糸50番水色系。まあレジロンと同じタイプだと思ってくれてOKです。
なんでこの糸にしたかというと、
・シャッペスパン#60よりも質感が素材に合っていた
・ある程度の伸びがあるので、パッカリングも起こりにくいと考えた(推測)
・滑りが良いので生地の通りも良いかと思った(推測)
・糸色が合っていた
エイジさんとのやりとりの中で、繊維の突き出し対策として
・新しい針を使う
・針は極力細く、先の鋭利なもの
・糸も極力細く、シリコンも塗布する
という風に教えていただいたのですが、糸に関してはそこまでする必要は無いだろう、というかシリコンオイル持ってないしなー ナイロン糸だから滑りは良いし、あんまり細い糸だと強度に問題があるからなー と、糸の見直し&工夫はしなかったのです。いや、実際はシャッペスパン#60からふぁじい淡色用透過性ミシン糸50番に替えたことで、繊維の突き出しはほんの少しマシになったのですね。それで納得してしまったわけ。
でも、縫いサンプルをいろいろ作っていきながら、突き出しもさることながら、糸調子が安定しないこともずっと気になっていたのです。パッカリング防止にと糸調子をゆるめていたのですが、どうしても上糸がプツプツと裏面に残る状態で、でも下糸はきついわけでなくゆるゆると生地から浮いており、糸締まりの悪い状態。仕方なく上糸の糸調子を強めるのですが、締めても締めてもきれいに縫えない。そのうち縫い縮みも出てくるし。
それでもあれこれいじっているうちに思い出した。針が細いということは、針が貫通して出来る針穴(=ミシン糸が通る穴)が小さい→下糸が引き上げられにくくなり、糸調子が乱れる。デニムにステッチをかけたときもそうやったやんか。針を太くしたら裏側がきれいになった、そうだそうだ。
針幹の細いDB×1NSの8番に対して、滑りの良いレジロンタイプとは言えども50番では太いのではないか。
そして実験。
ミシン糸を、手持ちの中で一番細いと思われるシャッペスパン#90に替えてみました。針はDB×1NSの8番。
結果。(クリックでものすごく大きくなります)
#90,美しいではないか!写真では大きな違いはわかりにくいかも知れないけれど、繊維の突き出しも多少は残るが触ってもプツプツはほとんど気にならない。針穴の状態もさることながら、裏面の縫い目、右二つが斜めに走っているのに比べて、#90で縫った方は縫い目も整っている。
え~ 糸だったの!?糸が問題だったの!?
でも#90じゃ弱いと思うんだよ・・・決して「薄物」ではないからね、この生地。
斯くして、「細くて強い糸」を探してネットの海をふらふら。
そしたら、各社から新合繊対応というくくりでいろいろ出ているのですよ。情報として知っていたはずなんだけど、いざというときに役立たない私の記憶力・・・・それはさておき、有名どころで言うと・フジックス「フィット」 ・モリリンダイヤフェザー「ユウゴ」 ・グンゼ「ファイン・ミュー」「ポリエステル」 などなど。
いずれも共通するのはスパン(短繊維)ではなくフィラメント(長繊維)であること。そして工業用3000m巻きからしかないこと・・・家庭洋裁にはちと厳しいサイズ。試し縫いのために買うのもためらわれるし。
家庭用だと、フジックスが出している「ファイン」が同じくフジックスの出しているフィットと同じタイプのようだけど#50しかないのよね。糸の太さを見ると、#60の方が良さそうなんだな。
それとオゼキ株式会社のミロマルチ。クライ・ムキさんがおすすめしている、ロック糸としても使える細くて強い糸らしいけど、店頭で売ってるのみたことないよ。ロック糸として使うには単価が高いし。興味がないから気がつかなかっただけで、実は身近なところに置いているのかなぁ。
各社それぞれの糸の比較表。数値はそれぞれのメーカーサイトの記載値およびカタログ記載の数値。
(クリックで大きくなります)
今回初めて知ったけど、糸の太さの単位ってデニールからデシテックス(dtex)になっているのね。へーへーへー。
そして、糸に表示されている番手と実際の太さって比例しているわけではないのね。
表にある「繊度」ってのが糸の太さだと思ってもらっていいんだけど、これは糸(繊維)の長さと重さから割り出した数値なので、素材の比重が変わると太さを比べる基準にはならないわけで。だからナイロン糸のふぁじいだけはこの数値を鵜呑みにして比べて良いものかどうかという気はします。厳密に言うと、ほかのポリエステル糸も加工の仕方で微妙な差はあるんだろうけど、まあ一応の目安ってことで。
引張強度(強力)の方も、メーカーによって単位が違うのですが、いろいろ調べまくってCNの数値の約2%増しがgfの数値になる(それぞれの計算方法&単位の意味は不明)ということで、2%ぐらいなら対して気にすることもないだろうと。
空欄の部分は資料に記載されていなかったので想像するしかないんだけど、どれもそうそうかけ離れた数字でないだろうと想像します。
この表を見ると、シャッペ#60よりもふぁじい#50の方が細い。フィット#60はシャッペ#90よりもさらに細いけど、糸の強さはさして変わらない。フィット#50だとふぁじい#50と太さ・強さともあまり変わらない。ユウゴ#60はその構成から見て、フィット#60とほぼ同一と思っても良いかな。グンゼポリエステル#60も良さそうだけど、ミロマルチと太さも強さもあまり変わらない感じ。
というわけで。
細くて強くて入手しやすく後々困らない(在庫・収納)という点で、選ぶとしたらミロマルチかな。わざわざ取り寄せるつもりもないので、見かけたら買ってきて試してみます。
ファイン#50でもシリコン塗布すればきれいに縫えたりするのかなぁ。そのうちシリコーンオイルと供給器も買ってみるか。
もしかしたら糸を替えればミシン針も9号でも大丈夫なのかも。
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